けんちから入電

けんちは人の心配をするどころではないほど疲れていた


わが子らを必死に育て上げ
どんどん金が必要になってくる
工場長に借金までして
残業を重ね
PTAの会長的なこともやり
家族を助け地域を助け
疲れはてて
なんでこんな大変な道を選んでしまったのかとため息をついた



立派だ
子供はそれでも、ひとりでもいると良いぞ
て言われた
立派だ



クソ無職らんまサーセン
いや、いちおう昨日ハロワ行って
スキー場の正社員に応募してきた
連絡待ち


午後休とった奥さんと一緒に不動産屋にも行って
眺めはよく立地もよく
我々のずっと憧れだった縁側庭付き平屋の一戸建て
台所は広く部屋数も十分


ただ便所が和式のボットン
そういう住処をゲットしてきた
仕事早いだろう?


仕事の連絡を待ってる間バイトをしないといけないが
クソ田舎なのでなかなか無い
駅前の居酒屋とかで半月でも雇ってくれるところを探してみようという予定
その居酒屋だって大した数もない


あとはいまの家を出る手続きをする
市営だし長く住むのを期待されている住宅なので
おそらく渋い顔をされるだろう
敷金は戻ってこないだろうしその上に修繕費をひっかけられるかもしれん
そんな金は今ない
新居の入居費だって奥さんに助けてもらわねば足りない



でも、ま、なんとかなるでしょ
とりあえずクソ無職なので奥さんの弁当を作る