指紋採取

いちおう初犯のオレは両手の指紋をとられた


指紋といっても指だけでなく手のひらの紋もんも取られる


取ったのはたぶん三つくらい年下の、鷹みたいな顔をした笑わない兄ちゃんだった




取調室に呼ばれてきて顔を見たとき
こいつはデキル!と直感するオレ


頭がよくて優しくて仕事ができて少しオタクないいやつ
をすぐ嗅ぎ分ける能力を持つオレは
鑑識の兄ちゃんにすっかり一目惚れする




指紋採取室には踊る大捜査線のオープニングとかで出てくるあの身長測るやつみたいなのもあって
まずはそれから




兄ちゃんは身長測るやつの、上下に動かせる頭に当てるやつみたいなの
実際は頭に当てるわけじゃなくてアルファベットとか数字がずらっと並んでる棒なんだが

そいつの一番右端の数字パネルをクルッと回転させて
新しいナンバーにした



下の床に足のマークが書いてあって
そこら辺が犯罪者たちの泥にまみれた靴によって汚れて、擦りきれていた


そのマークの上に靴を合わせて…オレも立つ…




最初は上半身の撮影(と思う)
きをつけしてくださーいと兄ちゃんもカメラの向こうできをつけする
数字の棒を頭の上まで上げて、正面で一枚


次は本棚にはりつけてあるマル4の紙の方を向いて
斜め前で一枚


次にマル2の方向いてくださーい


横で一枚



後ろはなかった



で次に棒を胸のへんまで下げて、下半身(たぶん)の撮影


ちんこの前で手をくんで、また正面、マル4、マル2の向きで取る




部屋にはオレに交差点で声をかけた、
人情派の白髪まじりの角刈り60歳、長さんが穏やかに座って見守っている




でいよいよ指紋採取だが
めんどくなったのでまたいつか



そう、鑑識は警官みたいにいろいろじゃらじゃらつけないけど、銃だけは携帯してるぜ
油断は禁物


あと採取の機械はNEC製だった