悪い知らせでしか鳴らないオレの電話が鳴った(長い

ホテル時代の同期のIくんが死んでしまった


同期の中で
男はオレを含め3人
そのうちのもう一人から電話があった
同期の女の子からも電話があった


どちらもとっくの昔にアドレスを消してしまって
たて続けに鳴らなかったらシカトしていたところだった
ばあちゃんが危篤寸前だったということもある



Iくんのアドレスもとっくの昔に消していて
後輩の中居さんと結婚しましたメールをもらってからは全く何の連絡もしていない




きょうは鬼忙しい日だった


おせちを本格的にやる家はもう今から準備を始めるらしい
われらが商店街はそういう人たちであふれてえらい騒ぎだった


人混みを客席から眺めつつ
まかないに手をつけられずに同期の子と敬語のようなタメ語のような
微妙な口調で話した


休憩が終わってからも
そのことを話せるような人はいないので
ひたすら仕事した
全部終わってから店長に
同期が死んじゃって、来月始めちょっとお休みいただきます
て言った



先輩からも電話があった
らんまくんも気をつけろよ。Iくんはいい顔で死んでたよ。
て言ってた



全然知らなかったのだけど元々彼には持病があって
昨日の強い地震が引き金になったのではないか
そんな話だった


妻である後輩の中居さんは妊娠していた
オレにはどうしようもない




妻にオレは
僕たちは1300年生きるよ。
とよく言う
人生80年だのは普通の人間たちの話であって僕たちとは関係ない。


うちの奥さんは出会う前に
何度か自殺未遂をしたことがあるという子で
同棲し始めの頃は
帰ってきたらマンションの前でぺちゃんこになってたらどうしよう
という想像を密かによくした


オレと結婚する条件として、オレが死んでも自分で死なないでくれ
という約束もした
うんとは言えない、て泣きながら言われたけど



奥さんに生き続けることだけ考えるように
毎日のように励ましているわけだが
そうしているうちに本当に1300年生きるのだと思えるようになった
いや生きるのである



だけど
同期の女の子から
うん、あのね、同期のIくんって覚えてる?Iくん、今日の明け方に急に亡くなっちゃったの。
ていう静かな声を聞かされていると
お前もいつかは死ぬのだと


なにか申し訳ないけど
コールタール的な黒くてドロッてしたもんを
べちゃってひっつけられたような気持ちになった


いや悪いがオレとは関係ない
1300年生きるのだと
そんなことを考えつつ集中するように言い聞かせて働いてた




弔問には行く
なんも言えることはないけど



来月の1、2日と行ってくる。せっかく一緒の休みなのにすまない。
て妻に言ったら大泣きされた


その前にすでに仕事で疲れたと言って泣いていたので
笑えるほど泣き止むまで言わずにいたが
3日くらいおいて言えばまた違ったかもしれない
だが話せるのは妻くらいしかいない




つかれた寝る
いいヤツは死んだヤツらさ
紅の豚が言ってるけどまだよく分からん




朝のパンはすごくおいしかった