お疲れ様でした(敬礼)


なんで写真横になってんだ


そんなことより


会ってきた
本庁の人に


約束通り15分前に行ったら
店の前に白の大型車一台止まってて、車と店の間を
スーツのおじさん一人と
私服のおじさん三人が
うろうろしていた


私服のおじさん三人が警視庁捜査第一課の人たち


店の、事件当時ごみが置かれてたところに
現場風景でおなじみの
白くXと書かれた黒い小さな
なんていうんだ、
立て看板みたいなやつ

こんなの


だからなんで写真横になってんだ
まあいい


で車の近くに
Aというのと
十メートルくらい離れて
Bというのが
アスファルトのうえに

ふだん賑やかな通りが
ところどころ点いた白熱灯に照らされて
がらんとしている




スーツのおじさんが無線で、
あっちとあっちと、こっち
人払い頼むね



店の前の道路を撮影するのに人払いをするという
そのための警官は5人はいると思われた
映画ロケが始まる時のようだ
大所帯だ



スーツのおじさんはムロイさんというらしい
警視庁のムロイさんといったらあのムロイさんですね
と言ったら笑われた
デデッデッデデ



私服デカ三人のなかに目が全然笑ってないおじさんがいて
どっちかと言えばこの人が
ギバさんに一番近い顔をしてたけど
僕のいる意味を説明してくれた



犯人はBの方から歩いてきたんですけど、
そこから当時本当にごみが見えたのか
火をつけられるほどの明るさだったのかを、
照度計をつかって確認します
で、それが確かに行われていたことの
証人になっていただきます



深夜といっても
店のまわりは普通に明るい
わざわざそこまでするのか?
犯人はもうつかまったんでしょ



ええ
でもちゃんと数字にして提出しないと



決まりですから、みたいな
フーン
すっごいなー


そしてこの人数
一人が起こした放火未遂で
10人くらいのおじさんたちが
深夜にうろつくハメになっている



ムロイさんがなんか小さい箱のようなものから
赤いレーザーっぽいライトを出して
それを15メートルくらい離れて
黒い板を持ってる私服おじさんに当てている
で何かぶつぶつ



すっごいなーすっごいなーを連発するオレ



立会人と書かれた緑の腕章を
左腕に、と言われたので左腕につけ
事件現場の中心で
ムロイさんと2ショット


フラッシュが光るも不満らしく
4枚撮る
ムロイはずっとキョウツケの姿勢で真面目な顔
よく拘置所の人間がやるような
前、右、後ろ、左で撮られたかったんだけど
ちょっとふざけられないムード




その後は道路の撮影で、人払いに時間がかかり
10分ほどすみっこで待つ
雨がまたちらほらと降り始める



僕のそばには必ず一人おじさんがついている
ギバが急に
今日のこと、日記に書いといてくださいねと言うのでどきっとする
オレのことはこの日記までお見通しか、と思う




刑事さんは、仕事時間決まってないんですか
と聞いてみる


決まってますよ
八時から五時…十五分までだったかな
残業は当たり前ですから


フーン
すっごいなー



ガガッOKでーすガガッ
通路の撮影終わり

警官たちは帰る



今度はA地点
平らな台の載った三脚が
Aの立て看板みたいなのの真上に設置され
台の上には照度計
黒い直方体でまんなかにデジタルの数字出るとこがあって、
その下にはボタンが5こくらい
デジタルの上にはマウスのカーソル動かすやつみたいな白いコロコロがついてて
ここで明るさを測ります、と説明を受ける


カメラが遠ざかり
ムロイと僕は照度計をのぞきこんで立つ
ムロイがなにやらボタンを押して測定をはじめる
デジタルが動き出して、しばらくして止まる


5.34、とか
出た数字をムロイが
ちょっと離れたとこに立つギバたちに伝える
照度計の仕組みを見学していたらフラッシュが光った


次はB
おんなじように
ムロイと僕が照度計をはさんで立ち
のぞきこんでるところを撮る
わざとシンミョウな顔をしてみるオレ


今度はXでおんなじように



終わった



お礼があります、の声に敏感に反応するオレ


小さい紙に下書きの通りに刑事の名前、日にちと金額を書いて
住所氏名にハンコ



ハンコは前に言われてたので持ってきたけど
朱肉がない

ないですかねと聞いたら
誰も持ってない


ムロイさんがさっき来てた警官を呼び戻して朱肉を持ってこさせる
10分ほど待つ


私服の一人と
ラグビーとアメフトについての話をする
やはりおじさんながらみんなガタイはよかった


警官になりたてみたいなのが二人きて
お疲れ様です!と敬礼
朱肉を出してもらって
押す


これだけなんだ、ごめんねーとムロイ
お疲れ様です!
警官帰る
帰りながらきっと、ショカツなめんなよとか言ってるんだろうな
すいませーん


手伝い賃は5000円だった
缶コーヒーくらいはもらえるかな程度に考えていたので
すごく嬉しい


やったーやったーを連発するオレ



おしまい