近所の中華料理屋(長い

幸薄そうな中国女子に会うつもりで行く
やっぱり何かに打ちひしがれたような顔で机を拭いていた


店に入ると日本人のおっさんが泥酔してて
顔見るなりここ座れ!言ってきて
くだらん話をずっと聞かされた
麻婆豆腐と半ラーメンのセットを食いつつ我慢して聞いて
おごってやる!て言われるのを期待してたけど
結局おごってはもらえなかった


半ラーミェンはインスタントコーヒーが隠し味に入ってるような味だった
ジャムおじさんみたいなコックが薄幸の中国女子に和訳させて、味はいかがですか?聞くので
おいしいです、って言ったらにこにこしてた



日本人のおっさんは、かつて地下鉄会社の営業部長をしていて
10年前は部下を40人連れて、しょっちゅう宴会をここで開いてくれてたらしい
社長のことをババァババァ呼んでて
口は悪いけど今こうして来てくれたから、いろいろサービスして、
10年ぶりにお返ししてるよ
って社長が言った




箸も靴もなかった旦那と結婚した後の社長の人生を聞いた
旦那はソッコー浮気をしたらしい
子供三人抱えて社長は一人、上海蟹の卸売業を立ち上げたけど
輸送手段が未熟で運んだカニの半分を腐らせたりして
2300万もの借金も抱えることになった
スケールが違う


子供をアメリカとか台湾に送って社長は単身日本へ
三つのバイトをかけもちして働くも三ヶ月で身体を壊してしまう
働き過ぎはやはり良くないよあなた


一ヶ月ゆっくりして体調を戻してから
お菓子の箱詰め工場に入る
そこでしばらくやっていたら、そこの社長から人材派遣の仕事をしないかと言われる
仲間の中国人なら山ほどいる
彼らに連絡をとって3,40人集めて、給料はまとめて自分がもらう


仲間の彼らはよく働いた
日給一万五千と聞いて、山のように人手は集まった
中国人だけでなく東南アジアからも集まって来た
400人の給料を、社長は一手に管理した
日本は好景気真っ只中で仕事は次から次へと舞い込んでくる



五年で社長の借金はなくなった
中国のビルを二軒買い、今の中華料理屋を建てた
二階に健康のためにカラオケセットを置くつもりでいる
もしくはこのビルを一年かけて十一階建てに改装する
三階から上を一晩五千円のビジネスホテルにする
三年で工事代を完済できる計算でいる





金切り声と日中チャンポンでよくわからなかったけど
多分そういう話をしてる間じゅう、
薄幸の中国女子は残念そうにメニューを眺めてた
ご両親は厳しかったですか?と聞いてみる


ハイ


殴ったりはされましたか


それは、あんまりないです


いつも我慢してるように見えるんですけど


…生きてる時は、ずっと我慢しなきゃいけないんじゃないですか


・・・



25歳でそんなアシタカみたいなこと言う女子初めて見た
ますます気に入った



長居してたら土砂降りになって
傘借りて帰った
銭湯でテレビ見てたらすぽるとの女子アナに急遽新人が起用されてて
緊張しますが頑張ります!ってにこにこしてた
日本は豊かな国だとおもった