よる飯2・本当は怖い愛とヤキニク

寝るつもりが
帰る途中でキャッチのおっさんが寄ってきて
今夜は一人で食べる言ったら
そこの焼肉屋、今日半額だよいうので
礼を言って入った



ひとりです
て言ったら
入り口のオバンがエエーッ!て奇声をあげた
うっさい



ジャズが流れてる焼肉屋は多くあるけど
クラシックは初めて


隣の席の彼氏が迷って
便所から戻れなくなるという広い店を
奇声のオバンはひとりで駆け回ってた



迷子の彼氏の彼女は美人だけど
タン塩を頼んでおきながら
コレ牛の舌でしょ・・
とか言ってた


けど僕たちだって、コレは牛のこの部位
コレはあの部位
なんてわかって食べてるわけじゃないよね
いいや絶対そうだ



はるか昔、僕たちがまだサルだった頃
一体何を考えていたのか


肉が食べたい。肉が食べたい。
毎日そればかりを考えていたのである。


火をおこすことを知った人類はその日獲れた肉を同族達に切り分け
焚き火を囲んでただひたすら命の糧を貪った
この肉が明日という日を今日に繋げ
明日もまた獲物を追うことによって人生は続いていく


その記憶がテーブルの真ん中の
網の上でよみがえる
くちゃくちゃ、コリコリという肉の歯ごたえ
ジュー、ジリジリと肉が焼ける音、匂い
肉を食べるという行為自体が
明日への希望、人生への希望を生み出すようにできているのだ


だからここはどの部位とか、そんなことはどうでもよくて
肉が食べたい!生きたい!
その思いだけがあるのである。
絶対にそうだ疑いようがない




まあオレは違うけど。




ロース、ハラミ、ホルモンミックス(塩)、三元豚カルビ(味噌)、ホタテ焼、ムンチュサラダ、セロリキムチ、ウーロン茶、緑茶二杯、チョンボッチュ(アワビ粥)
7800円
すごいな


 
寝る