じいちゃんの記録

今夜は我が家の兄弟が集結した
朝から食い物を仕込み
甥っ子姪っ子が走り回ってわいわい


のんべえのネイサンの旦那と一緒に飲む
40近くなった今になって急に衰えを感じてきたと言う
あまり食べれなくなった



30歳になった時には衰えみたいなものは・・・




全く感じませんでしたね。その頃はほんと頂点です。
体力と知識がちょうどいいバランスで交わる時というか・・・
何もかもがうまくいってました。あなたも今を楽しんだ方がいいよ。




最近はダメだと




口癖がね、まいっか、なんですよ
どんなことでもそれで片付けるようになって
朝起きてもはあ・・・て感じだし




ハァ



他の家族はリホームの時に掘り出した写真を見て
あの頃はかわいかった、とか言ってた




そんな時に病院から電話がかかってきて、
オレが取った



じいちゃんの容体が悪化し
意識混濁
血圧は60を切った
もし来れるなら集まってきて欲しい
という電話



母さんが横に立っていて
来たな、という顔をしていた


オレも電話を受けながら酔いを払いのけていたのだ



みんな一斉に臨戦体制に入るも
赤い顔をしていないのはおめでたのネイサンだけ
とりあえずばあさんを持ち上げてみんなで乗り込む



つい五日ほど前に来た廊下を
ばあさんを車椅子に乗せて通る
どんなひどい状態になっているのか、と
ハラハラして病室に入ったけど
ただ寝ているだけだった



ばあさんが泣き出す
お・・オラも一緒に行きてぇくれえだ・・・
オヤジと母さんがおじいちゃん、て呼ぶ


ただ寝ているだけだった



わりと美人の女医が立ってて
意識がはっきりとしなくて、血圧も60切ったのでお呼びしました、
て言った


母親が泣き出しネイサンも泣きだす


じいちゃんの呼吸に
酔いざめの全員が集中して
かすかな変化を読み取ろうとする



オレは手をこすり続けた
現役農家の時は悪魔のような手だったが
やはりすべすべして柔らかい
ただ冷たいのでこする
力はなく、まったく握り返してこなかった



弟夫婦も来た
隣に住んでいるのにそこの息子を見たのは五年ぶりくらいで
すっかりニートになってしまっていた


全員が呼吸に集中
ほおを膨らましてプスー、プスーて息をしている


看護婦が来て椅子を用意してくれる



足もこすってみようということでこする
血管が細くなり右足に血が行っておらず
完全に紫色をしていた


親指のへんに湿布が貼られていて
看護士のネイサンが
壊死してるのかもしれないね、と言った



足をこすり出してしばらくして
じいちゃんが動いた
頭を上げようとして、少し目を開けた



湧く病室


オレはマトモな左足の方をこすりまくる
しかしそれ以上の変化は見られなかった
ただ意識は回復した、
体力がもどればリアクションもあるだろうと
安堵の雰囲気



妹夫婦にも電話をかけ
とりあえずオヤジと弟だけ残ってみんな帰ろう



帰りの車の中で
流れ星を見た
いや、マジで