今日の客は八割がた中国人だった
頭ん中が悲劇的にぼんやりしていて
どうしようもなかった
千円買った客から一万円受け取って
つり銭に千円だけ渡そうとしていた
通り沿いの席に母親と
機関車のおもちゃを持った二歳か三歳くらいの男の子が座っていて
中国語を話していた
母親は深津絵里さんに似ていた
男の子はおとなしかったのが
だんだんむずかりだして
席から飛び出し通りのど真ん中へ駆け出し
いきなりズボンを下ろした
子供は小便がしたいのだった
僕が笑ってナシだよというジェスチャーをすると
母親が真っ赤になって僕に向かって
困ったような顔をするから
公衆トイレの方向を指した
したら二人は店の前ではやるな的な意味にとったらしく、子供は
となりのアクセサリー屋の目の前でまたズボンを下ろし
遂に用を足した
駅から会社帰りの人たちがどっと流れてきて
みんな顔をしかめた
母親はその間それ見ながらフツウに飯を食っていた
なんておおらかなんだろう
僕はいいぞもっとやれ的な顔で見てた
一応うちの客だから普段だったら事前に止めたかもしれんけど
今日はなんもしたくなかった
アクセ屋も何も言ってこなかった